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  <title type="text">evening earth</title>
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  <author><name>ヒナ</name></author>
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    <published>2010-10-13T13:13:49+09:00</published> 
    <updated>2010-10-13T13:13:49+09:00</updated> 
    <category term="novel" label="novel" />
    <title>ティエリアンカーベル</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[　馬鹿、と呟くニールの声は水っぽかった。 <br />
　ラファエルをあっさり自爆させたことに激昂していた先の姿はもはやない。代わりに今は、十八インチモニタの端へこつんと額を押し当てる、消沈した彼の背中を監視カメラが拾っている。 <br />
　ティエリアは拙く言い訳をした。 <br />
「貴方も分かっているはずです。あれが最善の方法だったと」 <br />
「&hellip;&hellip;」 <br />
「私を惜しんでいるのですか？　時間はかかりますが、生体端末ならいくらでも再製造可能、」 <br />
「るせぇ、感情は別モンだ！」 <br />
　ニールが押し殺した声で叫んで、ティエリアは沈黙を余儀なくされた。 <br />
　それはティエリアにも覚えがある。喪われた存在が残す虚無や、消えた温もりを辿る絶望。しかしティエリアと六年前のニールとでは事情がかなり違うのも事実で、ティエリアは今回、ニールの心情を慮る必要はまったくないと思っていた。 <br />
　何より。 <br />
「こうして貴方と話ができる&hellip;&hellip;。それで充分ではないのですか」 <br />
「&hellip;&hellip;ンーな言い方しなさんな。俺がいじめてるみたいじゃねぇか」 <br />
　ニールはやっと小さな微笑を声音に乗せた。 <br />
　ヴェーダはその間もさまざまなデータを受信していた。エルスの情報が着々と集まり、トレミーの館内放送に作戦会議の招集が流れるのももう間もなくのことだろう。 <br />
　いつまでもニールとこそこそ話してはいられない。では、とティエリアはモニタを省電力モードに切り替える。 <br />
　けれど寸前でニールの声が追いすがり、ティエリアは後ろを振り返るようにモニタを再度点灯させた。 <br />
「なぁティエリア&hellip;&hellip;痛かったろ&hellip;&hellip;？」 <br />
　息を飲む。 <br />
「俺が一番辛いのは、お前がお前を、自分の体を大切にしないことなんだ」 <br />
　ニールの手がモニタにそっと宛てがわれる。そこへ映るティエリアの頬を優しく包み込むように。 <br />
「けどな、お前がそうしたいってんなら今後何度でも受け入れるさ。お前がいてくれさえするんなら&hellip;&hellip;たとえ、どんな形でも」 <br />
「ニール&hellip;&hellip;」 <br />
「愛してるぜ。ティエリア」 <br />
　堪えきれず、ティエリアはぱたりと目を閉じた。実際は監視カメラの映像が嫌でも流れ込んできていたけれど、目を閉じるような気持ちで心を鎮め、ニールの手のひらをじんじん感じていたかった。ニールの手のひらの温もりを。 <br />
　ニールがまだ何か言いたそうに頭を上げる。遮って、ティエリアはニールに手を伸ばす。 <br />
　今、無性に抱きつきたい。貴方に抱きしめ返してほしい。 <br />
「貴方に会える&hellip;&hellip;だけで充分だと思っていたのに&hellip;&hellip;」 <br />
　だが伸ばしたつもりの指先は単なる電子の塊でしかない。 <br />
　馬鹿、に込められていた悲哀を、ティエリアはようやく理解した。 <br />
<br />
<br />
<br />
<div style="text-align: right">2010/10/13</div>]]> 
    </content>
    <author>
            <name>ヒナ</name>
        </author>
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    <id>hinahi.blog.shinobi.jp://entry/34</id>
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    <published>2010-03-31T23:35:41+09:00</published> 
    <updated>2010-03-31T23:35:41+09:00</updated> 
    <category term="novel" label="novel" />
    <title>flavour</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[　コクピットに片足突っ込んで何やらがさがさやってるティエリアを、俺は後ろから捕まえた。<br />
　非常食を整理していたらしい。賞味期限の新しいものへ入れ替えているのか、旧パッケージ品が足元に散乱している。座席の上に数袋、旧品の封が切られている。<br />
「食ったのか？」<br />
「賞味期限が切れてもまだ食べられるのか、気になって」<br />
「食うなよ」<br />
　腹壊すぞーと忠告すれば、ティエリアは首だけこっち振り返ってきょとんとした。<br />
「まるで貴方にはその経験があるようです」<br />
「あるさ」<br />
「では、分からなくもないでしょうに」<br />
「はぁ？」<br />
　要するに、賞味期限に対しさまざまな好奇心を覚えている自分へ共感せよ、と言いたいようだ。だからってガキのやるようなチャレンジをあえて今試みずとも……と思うのは俺がティエリアに共感していない証明なのか。めんどくせぇ。<br />
「あのなティエリア。ンーなの食ってっとキスしてやんねぇぞ」<br />
「……えっ」<br />
　俺の一言はまさに効果覿面だった。ティエリアはショックに青ざめさえした。手に持っていた非常食がばらばら落ちて、入れ替え前のと後のがいっしょくたに混ざっちまう。けどティエリアは目を見開いたまんま足元見ようともしない。<br />
　そんな傷付いた顔をして……。<br />
　俺は悪くないはずなんだが、ティエリアの目が潤んでるせいで妙な罪悪感に屈してしまった。<br />
「するから。キス」<br />
「……本当ですか」<br />
「お前が風邪引いて寝込んでたってしてやるよ」<br />
　な、と笑えばティエリアが途端に晴れた顔をする。<br />
「今は？」<br />
「もちろん」<br />
　ティエリアがそっと俺に背中を預けてきた。顎を持ち上げ、軽く仰のく。潤んだルビー色の瞳を閉じる。俺はゆっくりティエリアに顔を近付ける。<br />
「――駄目！」<br />
　だが急に、がつんと顎へアッパーを食らった。<br />
「ってェ……何だよ」<br />
「待って下さい！」<br />
「催促したのはティエリアだろが」<br />
「でもまだ駄目です！」<br />
　俺はティエリアに突き飛ばされた。ティエリアは口許を両手で覆い、左右を探しながら、<br />
「……口……すすいできます……ッ」<br />
　小さく呟き、恥じらいに頬を染め上げた。<br />
　座席へ置いてある賞味期限切れの非常食はレトルトカレー。たかが口移しの数滴程度で俺まで腹を下すと案じた、わけではないらしい。<br />
　かかかかわいくねぇか？　カレー味のキスで幻滅されるかも、と余計な危惧に苛まれるティエリア。<br />
「別に……気にしねぇけど」<br />
「私がします！」<br />
　初恋のキスはレモン味、を本気で信じていたティエリアだ。あんだけベッドで晒し合ってもまだこういうとこ初々しい。情緒面において幼児、とまでは言わねぇがジュニアスクールのガキ並みだ。純粋培養されて育ったみたいな。<br />
　俺にはそれが、ひたすら眩しい。綺麗すぎて。<br />
「俺、汗まみれのお前の匂いも好きなんだぜ？」<br />
　後退るティエリアを捕まえ直して今度こそ。<br />
　不安に身動ぐティエリアが心底、愛おしかった。<br />
<br />
<br />
<br />
<div style="text-align:right">2010/03/31</div>]]> 
    </content>
    <author>
            <name>ヒナ</name>
        </author>
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    <id>hinahi.blog.shinobi.jp://entry/33</id>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://hinahi.blog.shinobi.jp/novel/%E7%B6%9A%E3%80%80%E3%82%BD%E3%83%95%E3%83%88%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%A0" />
    <published>2010-03-26T13:31:51+09:00</published> 
    <updated>2010-03-26T13:31:51+09:00</updated> 
    <category term="novel" label="novel" />
    <title>続　ソフトクリーム</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[　ベッドサイドのソフトクリームをまた掬う。ティエリアの服を下だけ脱がし、バニラごと指を尻穴へ這わせる。<br />
「ロッ……クオンっ……冷た……ぁ」<br />
　ティエリアが身を震わせた。ソフトクリームのぬめりを借りた指がずぷんと奥まで進入する。まだ冷たかった塊がティエリアの中で一気に温まり、溶けて潤滑剤になる。<br />
　単にティエリアへおいしいものを食わせてやりたかっただけだった。そうやっていろんなものを教えて、世間知らずな彼を少しずつロックオンの色に染めたかったのだ。<br />
　けれど実際、ティエリアに染められつつあるのはこっちかもしれない。ティエリアのために行動することが日増しに多くなっている。この分だと、ティエリアのために身を投げ出す日が来てもおかしくなさそうだ。<br />
　指を曲げるとさっきティエリアに齧られた関節へ痒みを覚えた。掻くようにティエリアへ擦り付ける。ぐりぐり抉ればソコがふっくらロックオンの指へ絡もうとする。<br />
「ナカ、とろとろになってんぜ？」<br />
「言うな……ックオン……っ」<br />
　ティエリアをベッドに横たえた。滑らかな尻のラインがほんのり赤みを帯びている。足を片方折り曲げてひくつく穴を指で広げたら、溶けてどろどろになった白い粘液が滲み出てきた。甘ったるい匂いも強まっている。<br />
「ティー、すげぇエロい眺め……」<br />
　イレるのがもったいない、なんて今まで惜しんだことがあっただろうか。もいちどソフトクリームを掬う。できるだけ大きな固形の部分を崩れないように穴へ押し込む。けれど押し込む端からすぐに溶けてはだらだら太股へ垂れてゆく。<br />
　ティエリアが腰を軽く揺らした。<br />
「ひぁ……っも、じゅうぶん……っん」<br />
「ンーな焦りなさんなって。すぐにイレてやっから」<br />
　自分のモノにもソフトクリームを塗り付けた。ひやっとするのが逆に熱い刺激を生み出す。猛りを抑え、まず先端だけ、ゆっくりティエリアにあてがう。<br />
　ところがつるっと滑り込んだ。まだキツめだから摩擦が伴う。なのに奥まですんなり入って、勢いのままにティエリアを激しく貫いた。ティエリアは声も出せずに背筋を反らして絶頂を迎える。陸へ上がった魚みたいに何度も跳ねる。<br />
「……ぁ、ああ……ッ……」<br />
　ティエリアの中はソフトクリームでぬらぬらだ。それがロックオンに纏わり付いてはどろりと流れて隙間を埋める。ひどくじれったい快感に、ティエリアが落ち着くのを優しく待っていられなくなる。<br />
「あんッ！　だめぇっ、ロックオ……！」<br />
「――俺もイキそ」<br />
　半ばまで抜いたらソフトクリームがぼとぼと垂れた。前立腺を擦りながらまた突っ込んで、中で小刻みにスライドさせる。<br />
「音、聞こえるか？　じゅぷって鳴ってる」<br />
「あっ、あっ、あ……も、止めて、くださ……ッあたま、おかしくなっちゃ……っぁあ……あああ」<br />
「見てみろよ。お前と繋がってるココ……泡が立ってるぜ」<br />
　ソフトクリームが掻き混ぜられてもったりした泡になっている。ティエリアの穴の縁をより滑りやすくしてくれている。気泡が挿入の弾みに潰れると、結合部分にぷちぷち小さな疼きが走る。<br />
　ロックオンは性急に腰を使って自身を高みまで追い立てた。中に思い切り熱を吐き出した。ティエリアの腹、ロックオンの突っ込んでいる辺りが一瞬緩やかに膨らんで、そこにぶちまけているのが分かる。ティエリアの中はいつまでも痙攣を続け、一滴残らず搾り取ろうとしてるみたいだ。<br />
　震えるティエリアに圧し掛かったまんま、ロックオンはしばらく解放の余韻に浸っていた。体を動かすとべたついた感触。ティエリアの肌がロックオンに引っ付いては伸びる。剥がれてぱちんと音が鳴っても、ティエリアはぐったり放心している。<br />
「だいじょぶか、ティー」<br />
「……何が何だか……わかりません……」<br />
「そら光栄。ココで食べた方がウマかったわけだ」<br />
　ソフトクリームはベッドサイドから床へ滴るまでになっていた。ティエリアは雫を仰ぎ見てから、力の入らない拳でロックオンの胸をぽこぽこ叩いた。食べ物を粗末にするな、とか言われそうだ。その前にキスを落としてやる。<br />
　冷凍庫にはまだ半ダースもソフトクリームが残っていた。<br />
<br />
<br />
<br />
<div style="text-align:right">2010/03/26</div>]]> 
    </content>
    <author>
            <name>ヒナ</name>
        </author>
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    <id>hinahi.blog.shinobi.jp://entry/32</id>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://hinahi.blog.shinobi.jp/novel/%E3%82%BD%E3%83%95%E3%83%88%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%A0" />
    <published>2010-03-25T14:00:16+09:00</published> 
    <updated>2010-03-25T14:00:16+09:00</updated> 
    <category term="novel" label="novel" />
    <title>ソフトクリーム</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[　ティエリアは甘いものがあまり好きでないようだった。<br />
「甘すぎます」<br />
　初めて食わせたソフトクリームの感想は実ににべもない一言で、もちっと色好い返事を期待していたロックオンは苦笑いするしかない。<br />
「それに」<br />
「まだ文句あんのかよ」<br />
「はい。あまりにも冷たすぎます」<br />
　それが美味いんだろが、とはとてもじゃないが言えない雰囲気になっている。トレミー内が地上の夏みたいに蒸し暑くないせいかもしれない。って完全に責任転嫁か。ティエリアの好みを読み違えたのはロックオンだ。<br />
　ティエリアはカーディガンの裾を引っ張って伸ばす仕草を見せた。<br />
「寒ィ？」<br />
「こんなに冷たい嗜好品を摂取すれば当然です」<br />
　怒ってる、ような気がする。つんとそっぽを向かれてしまい、ロックオンはガラにもなくたったそれだけで泣きそうになる。<br />
「……あったかい茶ァでも淹れるわ」<br />
　ロックオンの自室にはちゃんと紅茶が備えてあった。ティエリアが来るようになってからだ。置き場所がなくてマグカップやティーバッグは電気ケトルごとユニットバスの洗面台に乗せている。<br />
　清潔好きに見えてそういうとこズボラなティエリアが褒めてくれたのはいつだったっけか。コンセントも水源も近く効率的だとか何とか。女なら絶対嫌がるだろうから、ああこいつもこんなナリして性格は立派に男なんだなと妙に感動した覚えがある。その落差が愛しいんだ。<br />
　ロックオンは立ち上がり、ティエリアの前を横切った。と、不意にティエリアへ腕を引かれた。<br />
「いえ、その前に」<br />
　ティエリアの顔が心なしか青い。<br />
「……貴方が私を温めればいい」<br />
　見つめられる。<br />
　――気が付いたら、ティエリアを座っていたベッドに押し潰しかけていた。ソフトクリームは台無しになる寸前でかろうじてティエリアが守っていた。ロックオンの脇からソフトクリームの頭が覗く。溶けた白い雫がコーンを伝い、ティエリアの手首へ垂れている。<br />
　ティエリアはきょとんと、だが次の瞬間にはさも満足げに瞬きをした。<br />
「これでは、食べることができません」<br />
「だな……悪ィ」<br />
　ティエリアを助け起こした。元通り座らせて、横から改めてティエリアを羽交い絞めにする。<br />
　体温がじわじわ染み渡り出すと、背中が少しひんやりしているのが伝わった。これじゃソフトクリームも体を冷やすだけだったろうな。ぎゅうぎゅう抱き締めてあっためてやる。ティエリアは甘えるように首を傾けて擦り寄ってくる。紅茶はひとまず要らなさそうだ。<br />
「垂れてんぞ、アイス」<br />
「……っあ」<br />
　ティエリアの手首を引き寄せて舐める。ティエリアの体臭とバニラが混ざってくらくらするほど甘ったるい。そのまま身を乗り出した勢いでティエリアの上唇を軽く舐めたら、こっちは熱くてさらに甘くて、甘さに思わずのめり込む。<br />
　ぎこちなく応えるティエリアの唇がソフトクリームより柔らかかった。歯列をまさぐり、舌を吸って、離れる頃には絡めた唾液が糸を引いた。<br />
　ティエリアはすっかり頬を上気させている。ロックオンへ全体重を預けてくる。<br />
「早く、食べないと……もっと溶けます……」<br />
　ソフトクリームは当初のフォルムを徐々に失いつつあった。指で掬うと溶けかかったバニラは予想したほど冷たくなかった。<br />
　指先をティエリアの口許へ付ける。<br />
　ティエリアは潤んだ瞳でロックオンを見つめると、ふ、と小さく息を吐き出した。目を瞑り、躊躇いがちに指を根元までくわえ込む。ソフトクリームを飲み込もうとして甘さにかわずか眉を顰める。白い雫が口の端からとろりと垂れる。<br />
「ンながっついて……気に入ったのか？」<br />
「んっ……ふ……」<br />
　ティエリアは首をしどけなく振った。軽く歯を立て、指の関節をしごくように引っ掻いた。<br />
　ソフトクリームは強く握られてコーンが砕けかけている。ティエリアの手からそっと外してベッドサイドへ無造作に置くと、バニラはみるみる溶け出した。<br />
　待ち兼ねたようにティエリアが両手でロックオンを手繰り寄せる。口からロックオンの指を抜き、濡れた唇を舌でしっとり舐め上げる。<br />
　体感温度の上がる部屋に、甘い匂いが立ち込めた。<br />
<br />
<div style="text-align:center"><a href="http://hinahi.blog.shinobi.jp/Entry/33/">next</a></div><br />
<br />
<br />
<br />
<div style="text-align:right">2010/03/25</div>]]> 
    </content>
    <author>
            <name>ヒナ</name>
        </author>
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    <id>hinahi.blog.shinobi.jp://entry/31</id>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://hinahi.blog.shinobi.jp/novel/%E6%98%9F%E3%81%AE%E5%9C%A8%E5%87%A6" />
    <published>2009-12-24T22:47:59+09:00</published> 
    <updated>2009-12-24T22:47:59+09:00</updated> 
    <category term="novel" label="novel" />
    <title>星の在処</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[　クリスマスツリーのてっぺんに星だなんて、いったい誰が決めたのだろう。<br />
「もう少し、右へ寄って下さい」<br />
「右ィ？」<br />
「あっ、行きすぎ、左……届かない……ッ」<br />
　ニールに肩車してもらってそこから思い切り腕を伸ばしてもまだもう少し届かない。妥協して星の頂点からツリーのてっぺんが少々見えてもいいかと思ったり、けれどちゃんとツリーのてっぺんに星の股の部分が来るべきであると思い直したり。逡巡が焦りに拍車を掛ける。<br />
「も、いいぜ。適当で」<br />
「嫌です」<br />
「ターキー買うんだろ？　売り切れちまうぞ？」<br />
「翌日に半額セールで売りさばく余裕を見越して入荷しているはずです」<br />
「よく知ってんなぁ。だいぶ俗世間に慣れてきたっつうか」<br />
「手元が揺れますから少し黙っていて下さい」<br />
　これが意地というものか。何が何でも星をてっぺんに付けてみせたい。<br />
「ティーエ」<br />
　けれど含み笑いとともに呼ばれて、ティエリアはようやく真のてっぺんを諦めた。<br />
　星はただの段ボール紙に黄色い折り紙を貼り付けて星型に切っただけだった。裏側に、ガムテープの粘着面を表にして輪にしたものをくっ付けている。だから元から、ツリーのてっぺんに乗せられるような形状をしていなかったのだ。ツリーだってたまたまお向かいさんが今夏引っ越した時に処分を押し付けられたものだし、だから天井へ突き当たるくらい大きいのだが、飾り付けはティエリアがちまちま作った折り紙の星とニールが工場でもらってきたという綿だけだ。いくら満足できる状態でてっぺんに星を飾れたとしても、殺風景なこの部屋に似つかわしく質素であることに変わりはなかった。<br />
　けれどてっぺんに飾れなかったらもっと情けない。街にきらめくイルミネーションの迫力をこれから目の当たりにするなら尚更。<br />
「……できました」<br />
　肩車されてる足を揺らしてニールに任務完了を告げれば、宥めるように膝頭をぽんぽん叩かれた。股の間に栗茶色の頭が挟まっている。変な気分だ。<br />
「怒んなよ」<br />
「怒っていません」<br />
「じゃーがっかりしてんだ？」<br />
「……ええ、きっと」<br />
　――貴方が。<br />
　ティエリアはいつも心配している。<br />
　私とともにトレミーを降りたニール。こんな質素で平凡な生活、ＣＢを離れた現在の状況に、本当は後悔しているのでは。<br />
　ニールは生活費を稼ぐため朝から晩まで働いている。毎日毎日。何をしているのかは知らない。ティエリアは典型的な箱入りだからガンダムの操縦と戦争以外に何もできず、毎日ニールの帰りを待ちながらみすぼらしい食事を作るだけだ。その料理だってマトモにできない。七面鳥も焼けない。年に一度のクリスマスイヴなのに。<br />
「……あのな、ティエリア」<br />
　ニールはティエリアを肩から下ろした。名残惜しげなその横顔をティエリアは直視できなかった。やっぱり星はてっぺんに付けるべきだったのだ。ニールを失望させてしまった。<br />
　名残惜しいのはティエリアが肩を降りたから、とはおよそ考えも付かない。<br />
「俺はお前にンーな顔してほしくねぇんだ。お前を毎日一番喜ばせてやりたい。……けど、なぁ、何が悪かった？　クリスマスツリーなんかやっぱ好きじゃなかったか、だよな、サンタを信じるガキじゃあるまいし」<br />
　口調はどこまでも軽かった。口許には笑みが浮かんでいた。子供をあやして適当なことを言っているみたいな気軽さだ。ティエリアから目を逸らして伸びをする、その背に一瞬の影が差さなかったら、ティエリアはクリスマスなんかと突っぱねてしまうところだった。<br />
「俺ばっか浮かれちまって」<br />
「違います！」<br />
　咄嗟にティエリアは怒鳴った。ニールの背中に後先考えずむしゃぶり付いた。<br />
「貴方が、クリスマスイヴに私といても楽しくなかったのではないかと！　皆で……刹那やアレルヤやイアン、ラッセ、ラ、ライルたちと……」<br />
　ものすごく不安だ。ニールが後悔していないのか。<br />
　後悔は今日だけのことではない。半生を捧げてまで痛みと歩んだ世界変革への道をあっさり放棄して、アイルランドの片隅で二人、細々とただの貧相な生活を営んで。何の変化も贅沢もない毎日、つまらない日々。ニールの人生は台無しになったんじゃなかろうか。<br />
　ニールの背中にしがみ付いたらティエリアは身動きが取れなくなった。何よりも離れたくなかったし、それに、ニールの今の表情を見ることが怖かったのだ。<br />
　こうやって不安をニールに押し付けるのもティエリアは嫌でたまらなかった。ティエリアがもっと頑張ればいいのだ。ニールを充足させられるよう、漫然とした日常の消化に埋もれないよう。けれどいくら頑張ってもまったくの無意味に終わるかもしれない。ティエリアを選んでくれたこと自体が過ちだったかもしれないのだから。そうやって何度も仮定と推量を行き来して、不安で、恐ろしくて、負の感情をニールに隠していることもできない。言っても困らせるだけなのに。<br />
「実はな、ティエリア。刹那には連絡してあんだ」<br />
　背中を伝ってニールの照れた声がした。<br />
「けど忙しいってよ。中東のさ……テロ組織を壊滅させんだって」<br />
「それは、Ｋ――」<br />
「俺の家族の仇がどうとかさ、刹那の過去とかさ。そういう私怨はお互いナシにしようっつって。テロ組織が不安定な政権と民間人の生活を危ぶめている、それを駆逐するのが仕事だっつって」<br />
　あっさりしすぎたニールの様子が嘘に見えて仕方ない。けれど嘘とも思えない。では我慢しているのですか。貴方は本当は今すぐにでも作戦に加わりたいのですか。私に気を使わせないため淡白な風を必死で演じているのですか。<br />
　ニールの挙動を疑うと同時に、ティエリアは少なからず驚いてもいた。ＣＢを離れてなおニールは機密情報を容易に入手しているのだ。<br />
（――未練、なのでは）<br />
　まるで、ＣＢから縁を切られたくない、と願っているようではないか。<br />
「だから俺らはさ、ティエリア。平凡な生活を送らなくちゃならねぇんだ」<br />
　ニールはティエリアとの民間人生活を捨ててＣＢに戻りたいのかもしれない。そう思いさえしていたティエリアには、だから、とニールの続ける意味が分からなかった。<br />
「俺たちはな、あいつらが勝ち取ったもんを享受するのが役割だ。今日こうやってクリスマスを満喫できるのはあいつらが戦ってるおかげだろ。あいつらだって、お前が慣れない平和にひたれてるから頑張れる」<br />
　ニールの声は優しかった。ティエリアとニールの間へ誤解や齟齬があることに気付き、どうにか払拭しようと心を砕いてくれている声だ。だからティエリアは心を尽くしてニールの真意を考える。<br />
　つまりこういうことなのだろうか。今ティエリアの感じている不安こそが、沙慈・クロスロードの求めていた平和だと。紛争の存在や政治の行く末は今この時に関係がなくて、目前の生活をいかに楽しむかばかり苦慮し、手元に使命のないふわふわした状態で平凡な毎日を退屈に過ごす。時にはちっぽけな悩みにかかずらって、泣いて、笑って。<br />
　大げさだけどさ、と前置きしてからニールは両手を広げて言った。<br />
「連中にとって、ティエリア、お前は世界の象徴なんだ」<br />
「……よく分かりません」<br />
「だよな」<br />
　広げられたニールの両手はおいでおいでと手招きしているようだった。とても誘惑に抗えない。ティエリアはニールの正面に回り、改めてお腹にしがみ付く。待ちかねたようにニールが両腕で包み込んでくれる。<br />
「ターキーを買いに行きませんか。早く、今すぐ」<br />
「売れ残ってるんじゃなかったのかよ」<br />
「ローストされた肉は温かいうちにいただくものなのでしょう？　今なら帰りにケーキも買うことができます、鏡餅も」<br />
「餅ぃ？」<br />
「クリスマスに食べるものではないのですか」<br />
「ははっ、そりゃお前、サジ君の言ってたお正月ってやつじゃねぇか」<br />
　ニールの匂いが目に沁みた。心配も不安も、だんだんどうでもよくなってきた。ニールが笑ってくれたらいい。それだけでいい。<br />
「あのな、クリスマスな、俺はどうでもよかったんだ」<br />
　笑いながら、ニールはティエリアの考えと似たようなことを言った。どうでもいい対象はだいぶ違うけれど。<br />
　ニールはティエリアごと横へ半歩足を出し、ハンガーに引っかかっている上着を二枚手に取った。一着をティエリアに羽織らせてくれる。ニールの腕が離れた肌寒さにしがみ付く力を強めると、お返しなのか、旋毛にニールの唇が降る。<br />
「クリスマスイヴをお前に楽しんでほしかったんだ。お前の笑顔が見たいから」<br />
（――私も！　同じです！）<br />
　ティエリアは思わず息を飲んだ。顔を上げて、ニールと目が合えば、心の中で叫んでいた。勢いが付きすぎて声帯を通らなかったのだ。<br />
　沙慈・クロスロードの夢見る平和がやっと具体化した。誰がどこで戦っていても構わない、誰がどこで死んでいっても構わない。ニールが側で笑っていてさえくれるなら。あまりに独りよがりで身勝手な理屈だ。真実に目を塞ぐ愚行。でも、自分を含む人間の中に愛する人だけを特化して思う気持ちが消えないことは確かなのだ。あとは、皆がその気持ちを優先させても誰も犠牲にならない世界があればいい。戦争根絶は、武力否定は、そのための一手段に過ぎない。<br />
「……ティエ？　難しい顔して、どした？」<br />
　クリスマスの朝に貴方の枕元へ贈るプレゼントを用意している。ティエリアは今、どうしても、二ヶ月かけて編んだマフラーをニールに見せてしまいたかった。<br />
<br />
<br />
<div style="text-align:right">2009/12/24</div>]]> 
    </content>
    <author>
            <name>ヒナ</name>
        </author>
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    <id>hinahi.blog.shinobi.jp://entry/30</id>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://hinahi.blog.shinobi.jp/novel/dampened%20heart" />
    <published>2009-10-15T02:27:04+09:00</published> 
    <updated>2009-10-15T02:27:04+09:00</updated> 
    <category term="novel" label="novel" />
    <title>dampened heart</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[　俺がティエリアとすれ違ったのは、クリスマスも間近に迫った夕暮れだった。<br />
　それなりに混んだ繁華街をティエリアは黙々と歩いていて、俯いた顔にさらさらの横髪が流れていて、明らかにサイズの余っている赤茶のレザーブルゾンが死ぬほど似合わなくてかわいくて。<br />
　だらりと垂らした右手の指は――隣を歩く、兄さんに絡められていた。<br />
　二人はそそくさと繁華街を早足で通り過ぎる。クリスマス前の喧騒に塗れ、ともすれば電飾の渦に埋もれかねない希薄さだ。できるだけ気配を押し殺しているのだろう。そうやって小さく小さく息を潜めて生きている。トレミーを降りて、この街で、二人。<br />
　俺は見て見ぬふりをした。<br />
　そしてティエリアは最後まで俺に気付かなかった。俯きながらかすかに口許が揺れ、相槌を打っているのだと分かる、そんな至近距離ですれ違ってもなお俺を認識した様子はなかった。すれ違いざま小さく小さく、柔らかい笑い声がした。ティエリアの指は兄さんの指を振りほどいて腕にしっかり絡まっていた。<br />
「――ヘコむよな」<br />
「そうか」<br />
　ひとしきり愚痴って立ったままぐいとヤケ酒を呷る。聞いているのかいないのか、起伏の読めない表情で俺をひたすら見ていた刹那は、この時初めて眉を一瞬だけ跳ねさせた。<br />
　地上になんて降りるんじゃなかった。あンなもん見せられるハメになって。クリスマスにかこつけて束の間の休暇など申請した俺が馬鹿だった。<br />
「俺だってさぁ、アテがあったらいつまでもガンダムマイスターやってねっつの。つかティエリアと一緒に引退したいとか俺のが先に思いついてたわけ、兄さんより」<br />
「そうか」<br />
「や、ガンダムが嫌いなんじゃねぇんだぜ？　ただ俺も数ある選択肢のうちここに残るっていう使命を選んだってか、やっぱケルディム扱えんのは俺だけだしさ」<br />
「そうか」<br />
「アンタだってマリナ姫のことがなかったらとっくに引退してんだろ？　――いや、してねぇな」<br />
「そうだな」<br />
「そうだよな、俺らの決意は生半可なもんじゃねぇし、紛争に武力介入する強力な憎まれ役は存在そのものに意味がある、だよな、なっ、刹那」<br />
「そうだな」<br />
　俺は思いっきり仰のいて瓶の酒を飲み干した。ぽとんと最後に落ちる一滴を突き出した舌先で受け止める。熱い。アルコールが舌に痺れを残し、舌から咽喉に熱が溜まる。<br />
　酔ってきたか、と頭のフチで考えた。<br />
　ティエリアが好きだった。いや、好きじゃなかった。兄さんの想い人を横から掻っ攫いたかっただけだ。いや、それも違う。俺だってちゃんと好きだったんだ。兄さんを？　いや、ティエリアを。<br />
　顔の上に掲げていた瓶を振り下ろすタイミングで俺はすとんと刹那のベッドに座っていた。座らされていた。すでに座っていた刹那が俺の手首を引いたのだ。勢い余って刹那の肩に凭れかかり、俺は慌てて身を起こす。<br />
「……せ、刹那？」<br />
　だが俺は身を起こせなかった。肘を乱暴に引っ張られたせいで一層刹那に密着している。刹那は無言で俺の腰へ手を回す。<br />
　酔いの回った頭がふら付き、刹那の首筋にことんと乗った。乗せてしまうと高さがちょうど気持ちいい。気持ちよすぎて頭がそこからじりとも動かせなくなるくらい。<br />
「俺がいる」<br />
「……はぁ？　アンタ、何言ってんの？」<br />
「ティエリアはニールとともにＣＢを去った。だがここにはまだ俺がいる。それでいいだろう」<br />
　慰め、だろうか。刹那の声が高すぎず低すぎず、耳を押し付けたところから振動になって脳へ伝う。頭を撫ぜられている気分になる。<br />
　あれ、俺、ほだされてねぇ？　いいのか？　いいか。<br />
「いいな、それで。うん。いいぜ」<br />
「そうか」<br />
　刹那の振動がひどく瞼を揺すぶった。閉ざすと内側がアルコールを直接含まされたごとく熱を持った。<br />
「アンタ意外と……口説き文句、ウマイな」<br />
「そうか」<br />
「どんな女でも惚れるぜ。イチコロ」<br />
「そうか。――お前はどうだ、ライル」<br />
「惚れる惚れる」<br />
「本当か」<br />
「マジマジ、大マジ」<br />
「そうか」<br />
「そうそう」<br />
　凭れていた肩が腕に代わって、俺は目を瞑ったまま次の行為をじっと待った。ほどなく唇に生温い感触が掠め去り、不思議なほど穏やかに俺はそれを受けていた。<br />
「俺らの行為がさ……ＣＢを存続させるっつう、この行為がさ……」<br />
　見えない視界で闇雲に刹那へ腕を伸ばす。縋りつくように抱き締める。<br />
「……あいつらの未来を拓く……かもしれねぇよな……」<br />
　かつて同じことを兄さんも考えたとは、俺も刹那も知らなかった。<br />
　俺は迷える小鳥みたいに雨宿りする場所を探して、刹那は俺を彼唯一の拠り所であるＣＢの鳥かごに繋ぎ止めたがって。きっとそうに違いない、俺のこの気持ちも、刹那が俺を甘やかすわけも、たかがその程度の動機から生まれるまやかしでしかないはず。<br />
　本気じゃない、と本気で念じながら、俺は刹那のキスを求めた。<br />
<br />
<br />
<div style="text-align:right">2009/10/15</div>]]> 
    </content>
    <author>
            <name>ヒナ</name>
        </author>
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    <id>hinahi.blog.shinobi.jp://entry/29</id>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://hinahi.blog.shinobi.jp/novel/%E5%88%B9%E3%83%A9%E3%82%A4" />
    <published>2009-06-28T12:10:44+09:00</published> 
    <updated>2009-06-28T12:10:44+09:00</updated> 
    <category term="novel" label="novel" />
    <title>刹ライ</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[　ライルがひょこひょこトレミーの廊下を歩いていると、ブルーの制服がＴ字路の横棒を右から左へ横切った。<br />
　ブルー、と色を認識する頃にはもう姿が見えなくなっていて、ブルーは刹那の色、と思い至る前にライルは後を追っかけている。床を強く蹴った推進力でＴ字路に向かって宙を遊泳。突き当たる間際で左側の壁に手を引っ掛けると遠心力で身体を左にぶん回す。<br />
「ライル」<br />
　ぼすん、と腰を受け止められた。<br />
　刹那がそこに立っていたのだ。ライルのいた縦棒から死角になってすぐのところ。もっと先に行ってしまったと気が焦っていたものだから、間が悪ければ刹那の腹を蹴飛ばしてしまうところだった。<br />
　驚いた拍子に壁へ掛けていた手が滑る。微重力に従い落下しかける。手をばたつかせ、刹那の肩にしがみ付く。<br />
「大丈夫か」<br />
「っぶね……！　アンタ、何でこんなとこに突っ立ってんの」<br />
　大の男がしがみ付いても刹那はびくともしなかった。マイスターなら当然なのかもしれないけれど、外見だけ見ればまだ子供の域を抜け切っていない少年だ。ここが微重力なせいももちろんあるにしろ。<br />
「――あ！　悪ィ」<br />
　コアラみたいに刹那へ抱きついている現状へライルはようやく愕然とした。慌てて離れ、ようとしたのに腰を刹那へ抱えられた今の格好が邪魔をする。ぐいと刹那の肩を押すがびくともしない。<br />
「悪かったって……せ、刹那？」<br />
「お前の姿が見えたから」<br />
「……は？」<br />
「ライルの姿が見えたから。待っていた」<br />
　瞳の奥を覗き込まれた。いやに真剣な表情だ。ライルは心拍数が跳ね上がるのを自覚する。呪縛されでもしたのか、俺は。<br />
「俺を待ってたって。何で」<br />
「さあな」<br />
「――ンだそれ、妙な期待させやがって！」<br />
　ライルは今度こそ本気で刹那の腕から逃れた。勢い余ってたたらを踏むと、すかさず刹那にやんわり腕を支えられる。<br />
　触れられた場所がちりちり痛い。そんなに強く掴まれてもいないのに。<br />
「ライル？」<br />
　俯くライルに刹那がそっと声を降らした。<br />
　ライルって、いつもはロックオンじゃなかったか？　それかフルネームでロックオン・ストラトス。こんな風に真面目な声音で本名を囁かれるのはあの時以来だ。兄さんの消息――文字通り消えたことを知らされて、ＣＢに勧誘された昨年。兄さんの後を継いでからはその名を封印したつもりでいた。<br />
「ッ離せよ！　いい加減！」<br />
　腕をもぎ取るように刹那から引っぺがした。それでも刹那の真剣な視線が絡み付く。耐えかねてじりじり後退り、数歩下がったところでやっと踵を返すことができた。走り去る。<br />
　心臓が、壊れそうだった。<br />
<br />
<br />
<div style="text-align:right">2009/06/28</div>]]> 
    </content>
    <author>
            <name>ヒナ</name>
        </author>
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    <id>hinahi.blog.shinobi.jp://entry/28</id>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://hinahi.blog.shinobi.jp/novel/%E7%A7%98%E5%AF%86%E9%80%9A%E4%BF%A1" />
    <published>2009-05-26T16:26:47+09:00</published> 
    <updated>2009-05-26T16:26:47+09:00</updated> 
    <category term="novel" label="novel" />
    <title>秘密通信</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[　ティエリアは自ら通信を開いた。彼に。<br />
「先に出撃します。貴方も……お気をつけて」<br />
『りょーかい』<br />
　ヴァーチェのコクピット内モニター左、小さく区切られたウインドウに、ロックオン・ストラトスの飄々とした顔が映る。まだヘルメットも被っていない。右手を顔の横へ垂直に立て、ウインクさえしてみせる彼は、それまで相棒であるハロと戯れていたようだ。<br />
　彼は緊張しないのだろうか。ＣＢが全世界に対して宣戦布告を叩き付けようという時に。<br />
「……気をつけて」<br />
『あぁ』<br />
「くれぐれも気を、……いえ」<br />
　なんべん言うんだ、と揶揄されそうな気がしてティエリアはやむなく口を噤んだ。だが予想した揶揄はない。ティエリアは肩透かしを食らった気分でモニターのロックオンを見る。すると彼は、珍しく、優しい笑みを引っ込めた。<br />
『なぁ』<br />
「はい」<br />
『約束しようぜ』<br />
「どんな」<br />
『簡単だ。お互いトレミーに無事戻ったら、』<br />
　ティエリアは音量のボリュームを上げる。ロックオンの声は低く、ゆったりとして、一音たりとも聞き漏らすまいとするティエリアにはもどかしいほど小さかった。意味はないのに左へ体が寄ってしまう。ロックオンの画像の口許で必死に耳をそばだてる。<br />
『――キス、しようぜ』<br />
　ロックオンは息だけで笑った。<br />
「……そんなもの……いつも、しているではないですか……っ」<br />
『おーおー真っ赤んなって、かわいー』<br />
「馬鹿にしないでもらいたい！」<br />
『ん、いつもの調子が出てきたな、ティエリア』<br />
「……ロックオン……」<br />
　それでようやく、自分が緊張していたらしいことに思い至るティエリアである。でもこの自分がミスなど決してするはずがないと思い込んでいるから、不安をロックオンに転嫁している。<br />
　この人には何でもお見通しなのだ。<br />
「……ロックオン……気をつけて……」<br />
　我慢できずにティエリアはまた呟いてしまう。ロックオンが小さなウインドウでも見て取れるよう大げさな動作で頷いてくれる。<br />
「気をつけてください……ニール」<br />
『ッ――ティエリア』<br />
　モニターとバイザー越しに、請われた約束を前倒しして一つ与えた。<br />
　続きはトレミーへ帰還してから。ティエリアは唇だけで笑み、ヴァーチェの発進シークエンスに移行する。幾度となく繰り返してきた手順を、今度は初めて、練習でなく実戦として行うのだ。いよいよミスは許されない。<br />
　緊張を飲むように目の端へちらりと横切らせてみればウインドウは、苦笑するロックオンをいつまでも映してくれていた。<br />
<br />
<br />
<div style="text-align:right">2009/05/26</div>]]> 
    </content>
    <author>
            <name>ヒナ</name>
        </author>
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    <id>hinahi.blog.shinobi.jp://entry/27</id>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://hinahi.blog.shinobi.jp/novel/sugar" />
    <published>2009-05-09T22:37:43+09:00</published> 
    <updated>2009-05-09T22:37:43+09:00</updated> 
    <category term="novel" label="novel" />
    <title>sugar</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[「ん、ほらよ」<br />
　素肌に毛布を引っ掛けただけでベッドへ寝転ぶロックオンが、その脇に腰掛けて身支度を整えるティエリアへ、ずいと何かを差し出した。こじんまりした紙袋である。ティエリアが受け取る前に彼は勝手に袋を開けると、中からかさりと小さな何かを取り出した。<br />
「土産」<br />
「――不要です」<br />
　昨日までロックオンは任務で地上へ降りていた。夜更けに宇宙へ帰還して、そのままこうして、朝に至る。寝かせてもくれなかった、と恨み言を吐いたところでどうせ彼には通じやしまい。ティエリアは寝不足な上極度に疲労した身体を無理矢理起こしているのだが、ロックオンはごろごろと毛布に包まりながらティエリアの腰へ引っ付いてくる。<br />
「見ろよ。シュガークラフトっての。砂糖菓子」<br />
　腰に腕を回されてしまっては立ち上がれない。ティエリアは渋々ロックオンが手に持つ土産とやらへ目を向ける。<br />
　人間だった。<br />
　ティエリアの親指ほどの大きさで、丸い顔に目、鼻、口がデフォルメで描かれている。肩で丸まる金髪は白いヴェールに覆われて、白いドレス、背中へ小さな白いリボン。ヴェールもリボンもすべて粉砂糖に水飴やアーモンドなどを練り合わせて作られているようだ。<br />
「かーいーだろ。お嫁さん。で、こっちは男な」<br />
　ロックオンは嬉々としてもう一体を取り出した。頭部は同じだがヴェールはなく髪が短くなっていて、胴体は白いスーツにやはり背中へ白いリボンがあしらわれている。ロックオンの手のひらに行儀よく並べられると清々しいウエディングの風景が鮮やかに見えるようだった。<br />
「……それで、なぜこんなものを俺に」<br />
　ティエリアが肩越しに一睨みすると、ロックオンは笑顔を少し引き攣らせる。怒ってんのかなー、と顔にしっかり書いてある。実際にティエリアは傍から見ればしっかりぷんすかしていたのだが、本人はそこまで腹を立てているつもりはなかった。単に理解が及ばないのだ。地上土産にこんなものを選ぶロックオンの心中に。<br />
　しかし、質問の意図を誤解したロックオンは露骨に慌てふためいた。<br />
「違う、違うって、そーゆーんじゃねんだティエリア」<br />
「ではどういう」<br />
「違うんだぜ、お前と結婚式挙げたいとかドレス着せるなら純白のマーメイドラインで髪に生花挿してとかじゃ」<br />
「――思ってるんですね」<br />
「う！　……まぁ……思ってなくはない、が……」<br />
　その辺りの感覚がティエリアにはからきし理解できない。そうも儀式が大事なものか。男にドレスを着せて楽しいか。ティエリアなら式も服もどうだっていい。ここにいるのがロックオン・ストラトスでさえあれば。<br />
　しおらしくこめかみを掻くロックオンは、菓子をころんとティエリアの手のひらへ転がした。<br />
「それよかお前がコレ食ってたらかーいーなって……思ってだな……」<br />
　腰に回される腕へぎゅっと力が込められて、顔を背中に押し付けられる。ティエリアは思わず身動きを止めた。<br />
「た、食べるのですか……？」<br />
　ティエリアは元が分かる形状の食べ物が苦手だ。だから魚はつくねやみじん切りになっていなければ食べたくないし、いくら砂糖菓子とはいえ人間の形を取っているなら尚更口に入れられない。<br />
　だがそうと知らないロックオンの拗ねた声が、ティエリアの服でくぐもって余計に頼りなく聞こえた。毛布からはみ出ているロックオンの脛、大きな足の、爪先が拳を握るように足の裏側へ丸められている。<br />
「……こんなもん、飾ってくれるとは思わねーもん」<br />
「飾ります。貴方がそれを望むなら」<br />
「でもお前土産いらねって」<br />
「それは」<br />
　ロックオンはティエリアのカーディガンを背中の真ん中で引っ張る。片側の肩がずるりと脱げる。妙に子供っぽい仕草を今は咎める気にならず、ティエリアは上体を捻ってロックオンの後頭部に近付いた。布団から覗く肩甲骨に胸の痒くなるざわめきを感じる。二体の人形をそこへ並べて載せてやる。<br />
「貴方自身が、私には何よりのお土産でしたから……」<br />
　ティエリアが静かに囁けば、ロックオンの機嫌が直るのはすぐだった。<br />
「――ティエリアっ」<br />
「あ、だめ、動いたら落ちます」<br />
　間に合わず二体はベッドの隅へ散らばった。拍子にこつんと二体の顔がぶつかった。首筋掴まれて噛み付かれるようなキスを仰のいて受けるティエリアのように。<br />
　壊れなくて良かった。<br />
　目の端に菓子を確認すると、ティエリアは目の前の愛しい男に熱中した。<br />
<br />
<br />
<div style="text-align:right">2009/05/09</div>]]> 
    </content>
    <author>
            <name>ヒナ</name>
        </author>
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    <id>hinahi.blog.shinobi.jp://entry/26</id>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://hinahi.blog.shinobi.jp/novel/nightmare" />
    <published>2009-04-30T21:05:07+09:00</published> 
    <updated>2009-04-30T21:05:07+09:00</updated> 
    <category term="novel" label="novel" />
    <title>Nightmare</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[　右目から血。ぼとりと目玉。それでもコクピットに飛び乗って、去る背中、右目を庇って激戦の果て、閃光に飲まれ爆発し優しい顔も栗茶色の髪も銃を撃つ手もティエリアを抱き締めてくれた体が、全部、<br />
「ッやぁーーーっっ！！」<br />
「ティエリア！」<br />
　飛び起きた。<br />
　夢だった。<br />
　ティエリアの肩を掴んで揺さぶる優しい顔が、彼が、そこにいて、大丈夫夢だった悪夢は醒めて悔やんでも悔やんでも取り返せなかった自分の魂の根幹が、ここに。<br />
「……ロックオ、……ニー……」<br />
「あぁ、俺だ、ニールだ」<br />
「ニール……」<br />
「大丈夫か、ティエリア」<br />
「ニー……、っ、ル、……ぅ」<br />
　涙が溢れた。絶対失えなかったものを自らの過失で失う恐怖、生きたまま四肢を裂かれて腹を割られるより耐え難い、苦しみのあまり死んでいいなら一秒毎に死に続けるほどどろどろに辛い辛い夜。もうとうに終わったはずのそれがこうしてニールを取り戻した今もまだティエリアを苛んでいる。月のない夜、獏も喰わない爛れた夢で。<br />
　ニールは何も言わなかった。悪夢に怯えるティエリアを、割れ物のように触れるか触れないかで抱き寄せた。<br />
「……ニール……僕は、どうすれば……」<br />
　貴方がすぐ傍で眠っていても、貴方が死ぬ夢に魘される。これは貴方への背反か。貴方の生を冒涜することになりはしまいか。<br />
　ニールが目許へ落としてくれる淡い口付けひとつさえ、再び失くしてしまいそうで怖かった。人間とは何度でも飽きず過つ生き物だ。人間になるということはその愚かさをも己が内に含まれていると認めることだ。すなわちティエリアは再び繰り返すかもしれない。あの悪夢を、現実を。<br />
　ティエリアは必死でニールの体温を探った。とめどなく涙が零れ出た。怖くて恐ろしくてこれから一歩も前に進めないと思った。<br />
　けれどどこかで安心している。あの時と違って今はちゃんと泣けるから。落ちた涙を舐め取ってくれるひとがいる。未来を切り拓く力をくれる。<br />
「今度こそ……僕が必ず貴方を守る……！」<br />
「――そりゃ俺の台詞だろッ」<br />
　涙ながらに決意したのに、お前ンっとにかわいいヤツ、とニールは笑うばかりだった。<br />
<br />
<br />
<div style="text-align:right">2009/04/30</div>]]> 
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            <name>ヒナ</name>
        </author>
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