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ティエリアの制止を無視し、刹那を幾度となく殴り付け責め立てていた彼は、今はその刹那に取り縋って慟哭していた。
一人の女の名を繰り返す彼の背中を見つめながら、ティエリアは鼻の奥につんとしたものを感じて慌てて唇を噛み締める。
この感覚は、知っている。覚えている。これは泣いてしまいそうな時の前兆だ。
けれどティエリアは泣く訳にはいかなかった。何故ならこの悲劇はティエリアの所為だからだ。
ティエリアが彼を拒まなければ、彼は彼女を選ぶ事は無かった。
彼が彼女を選ばなければ、彼はこんなにも傷付く事は無かった。
彼女も、少なくともこんな悲劇の中で死を迎える事は無かっただろう。
刹那もこんな、敢えて憎まれる道を選ぶ真似はしないで済んだ筈だ。
だからこれは全て己の所為。
―――そう自身を責め立てて尚、ティエリアは『彼』以外を選ぶ事が出来ない自分を自覚していた。
例え顔が、声が酷似した人間が居ようが。『彼』が既にこの世に存在しなかろうが。
ティエリアの想いが向かうのは、いつまで経ってもただ一人だけ、で。
(……何と、いう)
何処までも劣悪な己の残酷さを噛み締めながら、ティエリアは彼の背中から目を背ける様に顔を俯ける。
女の死を聴いた瞬間一瞬浮かんだ歓喜という名の安堵には、必死に蓋をして。
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flavour (03/31)

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