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 隣で眠るロックオンを起こさないよう、ティエリアはそっと毛布をずらした。足腰に力が入らない。ずるりとベッドから崩れ落ち、一糸も纏わず、冷たい床へ不可逆的に尻餅を突く。
 同じ顔、同じ遺伝子を持ちながら、抱き方だけはまったく違った。
 ティエリアは自分の身体を鈍い動作で検める。至るところ鬱血の跡が散り、胸には噛み付かれた歯型、脇腹には伸びた爪で掻かれた小さな擦り傷が、そして男を受け入れた場所は無理な挿入に裂けてしまったかじりじり痛む。
 満身創痍だ。力なく独り言ちる。
 このロックオンがなぜティエリアを抱きたがったのか、心当たりは浮かばなかった。けれど自分にとってその申し出は悪魔に勝る誘惑であった。四年前にロックオンを死なせてしまったティエリアにとって、同じ顔の男へ蹂躙される以上の処罰は思いつかない。死んだ彼を愛しながら双子の弟へ抱かれる矛盾もそれによって抱かざるを得ない二人に対する罪悪感も、ティエリアの心身を最も有効に痛めつける。ゆえに、最適な処罰である。
 こんなことを続けても、彼は戻ってこないのに。
 ティエリアはロックオンの髪へ指先を絡めた。起こしてしまうかも、と分かっていながら敢えて触れた。もし起きればきっと再び犯されて、ティエリアは再び自分を罰することができる。それに……違うと分かっていても、彼と同じ声を聞きたい。彼と同じ瞳を見たい。彼と同じ肌に包まれて、同じ声を耳に受け、少しでも、ほんの少しでいいから、彼に飢えるどうしようもない渇きを紛らわすことが叶うなら。
 処罰と言っておきながら何と身勝手なことだろう。
 ティエリアは自嘲した。力の入らない指先で眠るライルの髪を撫でた。柔らかな、癖のある髪が懐かしくて愛しくて、視界がぼやけるのに気付いたら、
「――ロックオン……」
 泣いていた。


2009/04/15
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