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 ライルがひょこひょこトレミーの廊下を歩いていると、ブルーの制服がT字路の横棒を右から左へ横切った。
 ブルー、と色を認識する頃にはもう姿が見えなくなっていて、ブルーは刹那の色、と思い至る前にライルは後を追っかけている。床を強く蹴った推進力でT字路に向かって宙を遊泳。突き当たる間際で左側の壁に手を引っ掛けると遠心力で身体を左にぶん回す。
「ライル」
 ぼすん、と腰を受け止められた。
 刹那がそこに立っていたのだ。ライルのいた縦棒から死角になってすぐのところ。もっと先に行ってしまったと気が焦っていたものだから、間が悪ければ刹那の腹を蹴飛ばしてしまうところだった。
 驚いた拍子に壁へ掛けていた手が滑る。微重力に従い落下しかける。手をばたつかせ、刹那の肩にしがみ付く。
「大丈夫か」
「っぶね……! アンタ、何でこんなとこに突っ立ってんの」
 大の男がしがみ付いても刹那はびくともしなかった。マイスターなら当然なのかもしれないけれど、外見だけ見ればまだ子供の域を抜け切っていない少年だ。ここが微重力なせいももちろんあるにしろ。
「――あ! 悪ィ」
 コアラみたいに刹那へ抱きついている現状へライルはようやく愕然とした。慌てて離れ、ようとしたのに腰を刹那へ抱えられた今の格好が邪魔をする。ぐいと刹那の肩を押すがびくともしない。
「悪かったって……せ、刹那?」
「お前の姿が見えたから」
「……は?」
「ライルの姿が見えたから。待っていた」
 瞳の奥を覗き込まれた。いやに真剣な表情だ。ライルは心拍数が跳ね上がるのを自覚する。呪縛されでもしたのか、俺は。
「俺を待ってたって。何で」
「さあな」
「――ンだそれ、妙な期待させやがって!」
 ライルは今度こそ本気で刹那の腕から逃れた。勢い余ってたたらを踏むと、すかさず刹那にやんわり腕を支えられる。
 触れられた場所がちりちり痛い。そんなに強く掴まれてもいないのに。
「ライル?」
 俯くライルに刹那がそっと声を降らした。
 ライルって、いつもはロックオンじゃなかったか? それかフルネームでロックオン・ストラトス。こんな風に真面目な声音で本名を囁かれるのはあの時以来だ。兄さんの消息――文字通り消えたことを知らされて、CBに勧誘された昨年。兄さんの後を継いでからはその名を封印したつもりでいた。
「ッ離せよ! いい加減!」
 腕をもぎ取るように刹那から引っぺがした。それでも刹那の真剣な視線が絡み付く。耐えかねてじりじり後退り、数歩下がったところでやっと踵を返すことができた。走り去る。
 心臓が、壊れそうだった。


2009/06/28
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